山梨県の最低賃金が、現在の時給1052円から61円引き上げられ、1113円となる見通しです。
引き上げ率は5.80%で、国が示した目安額56円を5円上回りました。物価高に苦しむ労働者にとっ
て歓迎すべき前進です。
しかし、私は「これだけで山梨県が人口減少県から抜け出せるのだろうか」という疑問も感じます。
💰山梨県の最低賃金は1113円へ
山梨地方最低賃金審議会は、県内の最低賃金について次のように答申しました。
異議申し立て期間を経て正式に決定されれば、11月1日から適用される見通しです。
フルタイムで月160時間働く場合、最低賃金で計算した月収は次のようになります。
現在:1052円×160時間=16万8320円
改定後:1113円×160時間=17万8080円
増加額:月9760円
年間では約11万7000円の増加です。ただし、これは税金や社会保険料が差し引かれる前の金額
であり、手取りの増加はこれより小さくなります。
🗾隣接する都県との格差は縮小
山梨県の最低賃金は、これまで隣接する東京都、神奈川県、埼玉県、長野県、静岡県より低い
状態でした。
今回の引き上げ幅61円は、隣接する5都県の引き上げ幅を上回ります。
東京・神奈川:54円
埼玉:55円
長野:56円
静岡:57円
山梨:61円
そのため、金額の差は一定程度縮小すると考えられます。
しかし、最低賃金の水準そのものでは、山梨県が隣接都県に追いついたわけではありません。
東京方面に通勤・転居できる地域では、より高い賃金を求めて県外へ働きに出る流れが今後
も続く可能性があります。
👥最低賃金と人口減少は無関係ではない
山梨県の人口減少には、出生数の減少、高齢化、進学や就職を理由とした若者の県外流出など
、複数の原因があります。
そのなかでも「働く場所」と「賃金」は非常に重要です。
県内で働いても十分な収入が得られなければ、若者は東京や神奈川などへ移ります。県外で就職
し、そのまま結婚や子育てをすれば、山梨県に戻る機会は少なくなります。
最低賃金の引き上げには、次のような効果が期待できます。
働く人の生活を支える
県外への人材流出を抑える
消費を増やして地域経済を支える
非正規雇用者や女性、高齢者の所得を改善する
企業に生産性向上を促す
賃金を上げることは、単なる労働問題ではありません。人口政策や地域経済の維持にもつなが
る取り組みです。
⚠️1113円で暮らしを守れるのか
最低賃金が1113円になっても、生活が一気に楽になるとは限りません。
食品、電気、ガス、ガソリン、家賃、社会保険料などが上昇すれば、61円の引き上げ分が物価高
に吸収されてしまいます。
特に山梨県では、自動車が生活に欠かせない地域が少なくありません。車両代、ガソリン代、自
動車保険、車検、修理費など、都市部とは異なる負担があります。
時給1113円で1日8時間、月20日働いても、月収は約17万8000円です。そこから税金や社会保
険料、家賃、光熱費、食費、自動車関係費を支払えば、貯蓄や子育てに回せる余裕は限られます。
「最低賃金を上げたから十分」ではなく、地域で普通に暮らせる賃金水準を考える必要があります。
🏭中小企業への支援も欠かせない
賃上げの必要性は明らかですが、山梨県内には価格転嫁が難しい中小企業や小規模事業者もあ
ります。
人件費だけが上昇すれば、事業者は次のような対応を迫られるかもしれません。
従業員の勤務時間を減らす
新規採用を控える
商品やサービスを値上げする
機械化や無人化を進める
採算の取れない店舗を閉鎖する
こうした事態を防ぐには、企業に賃上げを求めるだけでなく、設備投資、デジタル化、人材育成
、省エネ、価格転嫁などを行政が支援する必要があります。
大企業が下請け企業に適正な価格を支払う仕組みも重要です。
🤔知事の審議会出席は「圧」だったのか
今回の審議では、長崎幸太郎知事が審議会に出席し、大幅な引き上げの必要性を訴えました。県
の担当者も同様の主張を行っています。
労働者側は145円、使用者側は34円の引き上げを提示し、当初は100円以上の開きがありました
。専門部会は7回開かれ、最終的に61円でまとまりました。
一方、委員からは、知事や県担当者の出席を「圧力」と感じた人がいたのではないか、という趣旨
の意見も出ています。
知事が県民生活の改善を訴えることには意味があります。しかし、最低賃金は労働者、使用者、
公益委員がそれぞれの立場から議論し、独立性と公平性を保って決めることが大切です。
賃上げという結果だけでなく、決定までの手続きが適切だったかどうかも検証する必要があります。
🌱人口減少から抜け出すために必要なこと
最低賃金1113円は、大切な一歩です。しかし、最低賃金の引き上げだけで人口減少を止めること
はできません。
山梨県には、次のような総合的な政策が求められます。
若者が希望を持てる正社員雇用を増やす
東京圏との賃金格差をさらに縮める
家賃や住宅取得費を支援する
結婚、出産、子育ての負担を軽くする
公共交通を維持し、自動車依存による負担を減らす
医療・介護・保育・教育の働き手を確保する
地元企業の生産性向上と価格転嫁を支援する
県外に進学した若者が戻れる仕事をつくる
人口減少対策で重要なのは、「山梨県に残ってほしい」と呼びかけることではありません。
若者が山梨県で働き、結婚し、子どもを育て、将来まで安心して暮らせる条件を整えることです。
✍️まとめ
山梨県の最低賃金が1113円になることは、物価高に苦しむ労働者にとって前進です。国の目安
を5円上回り、隣接都県より大きな引き上げ幅を示したことも評価できます。
しかし、時給1113円だけで生活の安心や人口減少問題が解決するわけではありません。
賃金、安定雇用、住宅、交通、子育て、医療などを一体的に改善しなければ、若い世代の県外流
出は止まりにくいでしょう。
今回の61円引き上げを一時的な成果で終わらせず、山梨県で働き続けたいと思える地域づくり
につなげられるかが問われています。

